50万円の買い物をクーリングオフした話

戒めとして、書き残そうと思う。
かなり時間をロスしてしまったし、同じ轍を踏まないように。


■事の発端

シルバーウィーク後半のある日、突然知らない携帯番号から電話がかかってきた。
電話に出ると若い女性販売員で、
「オータムフェアをやっているからお店に来てみて欲しい」
という内容。

電話が終わるとLINE経由で連絡を取り始めた。
具体的に来店のスケジュールが確定。
「メンズ財布を見たい」と依頼し、当日を迎える。

未だに電話番号の出処は不明。グループ企業も一通り調べたが、購入履歴なし。


■販売店でのやりとり

ノコノコとお店に行ってしまう。
最初は財布をいくつか見せてもらったが、アクセサリーに興味は無いかという話になり、
「これ似合うと思うんですよね〜」
と言いつつ、身につけさせる。

その後、様々な宝石を見せ、ランクや良し悪し、稀少性について一通り解説を受ける。
このとき、ブラジル産のアレキサンドライトという宝石が、現時点で手に入るのは稀少だと刷り込まれる。

しばらくすると部長と名乗る女性が増え、
「このショップでしか買えないダイヤモンド」
についての解説を始める。
その後、唐突に最初に選んでいたアクセサリーにダイヤモンドを埋めた場合の見積もりの話に入る。

「いや、いらないんで…」とやんわりと断っていると、
「機会:お店に来たタイミング」
「担当:担当者の良し悪し」
「金額:支払い可能か」
という3要素が満足されているならば、それは買い時だという誘導を受ける。

特に「機会」については随分押してきており、
・宝石を見に来ることなんて、そうあることではないが、今日はたまたま来た
・オープニングフェアを控えており、普段は出ないような高級な宝石が比較的安値で手に入る
などと、「非常に稀なグットタイミングなんです」という激しいアピールを受ける。

あと「担当者」の部分は、お人好しだと「ダメ」とか絶対に言えなかった。

ずっとやんわり断り続けていると、「じゃあどの宝石なら欲しいですか」という話になり、
ブラジル産アレキサンドライトに切り替わった。

その後、「実はフェアのために仕入れていたんです」と、奥から出てきた。
あれだけ稀少だと、もう手に入らなくなっていると言われていた、
ブラジル産のアレキサンドライトが、目の前に出てきたわけだ。

16時に来店し、すでに22時半過ぎ。
「もう、お客様だけです、本当に他の社員にも内緒にして欲しいのですが…」
と言いつつ、ダメ押しの値引きが始まる。

結果として、断る勇気も無く、長時間の勧誘に心も折れてしまい、
税込価格 50万円 のブラジル産アレキサンドライトネックレスのローン契約を結んだ。

このとき、8日間以内であれば、クーリングオフができますよ、という説明を3回くらい受けた。


■クーリングオフ申請

翌朝、友人から電話がかかってきた。
絶対に怒られると一瞬でわかった。バツが悪そうに電話に出て、一通り話した。

「そんな米粒より小さい、冴えない色した石に50万円も値打ちがあるものか。」
「全く同じ勧誘手口がYahoo知恵袋に載っているぞ。」
「クレジット会社はどこだ。聞いたことないぞそんな会社。」

と、いろいろ調べてくれた上に、

今すぐ消費生活センターに行ってクーリングオフをしてこい。
本当に欲しいなら、後日ちゃんとしたお店でゆっくり選んでくればいい。

と真剣に言ってくれたおかげか、昨日までの「購入を正当化していた自分」に気づけた。


早速、市の消費生活センターに連絡。
一通り状況を説明すると、法的にもクーリングオフの対象になるとのこと。

1. 官製ハガキを2枚用意。それぞれ「販売店宛」と「クレジットローン会社宛」のもの。
2. 下記を参考に、契約解除通知書を作成する。体裁サンプル
3. はがき2枚のコピーを取る(送付した内容の証拠として必要)
4. ここで一度、はがきのコピーと契約書関連一式を消費生活センターにFAXで送信
   センター側で一通り見てもらい、問題ないとされる。※1
5. 郵便局へ行き、簡易書留郵便で送付、受領書を保管する。(発信の事実、発信日の証拠となる)

※1:この時センター側でも内容を保管しており、相談を受けたという事実と共に、証明をしてくれるようになる

以上で手続きは終了。
販売店やローン会社から電話がかかってきた時は
「クーリングオフの手続きをしましたので」
と言うこと。ごちゃごちゃ言ってきたら、通話録音して出るとこ出ようや、って話にする。

重ねて書くが、
簡易書留の受領書は、「通知した」という事実を証明するものとなるので、必ず保管しておくこと。
クーリングオフは発信主義なので、「発信した」という事実を証明できる必要がある。

あと、クーリングオフは必ず書面で通知することが法律で決まっているらしい。
やはり「言った」という事実を物的証拠で証明できるところがポイントなのだろうか。


■まとめ

被害者面した文面になっているが、完全に自業自得である。

引っかかった奴が悪い。
断る勇気の無かった自分が残念なだけ。

本当、あって良かったクーリングオフ制度…。

「女性にチヤホヤされながら高価なアクセサリを購入させられる」
なんていう事例は、再現ドラマを見ている第三者目線だと
「絶対に引っかからないわ〜」
と鼻で笑ってしまうようなことだったのだけれど、まさか自分が引っかかるとは思いもしなかった。
そんな場面に入っていっているという認知すらなかった。

実際目の当たりにすると、だんだんとのめり込み、心理的に余裕がなくなっていき、
徐々に心の内で「高価な買い物だが、良い買い物のはずだ」と正当化し始める。
そしてそれを他者から否定されると、強い不快感を示すようになる。
怪しいな・嘘くさいなとうっすら思いつつも、購入してしまった以上、騙されたと認めたくなくなる。

こういうの「合理化」だとか「認知的不協和」というらしい。
「すっぱいブドウ・甘いレモン」とかいう分類もあるのだとか?
このあたり、あまり詳しくないので詳しそうなサイトへ。


本当に販売店が騙そうとしていたのか、その真偽は定かではないし、
宝石も、もしかすると本当はとても稀少価値のあるものだったのかもしれないが、
今となっては確認しようのないことだし、あまり気にしないことにした。

そして、お勉強代として、友人には焼き肉を奢らなければならない。
こっちもクーリングオフしたい。


■ちなみに

アレキサンドライトという宝石自体は、それなりに有名なもののようで。

・6月の誕生石
・太陽光の元では緑色に見え、白熱灯の元では赤紫色に見える
・この変色性が認められれば、どんな石であれ「アレキサンドライト」を名乗ることができる
・ロシア、ブラジル、スリランカと産地があるが、今はスリランカ産のみ
・スリランカ産はブラジル産より品質面で劣る

宝石のコレクターにとっては、その変色性、稀少性からもて囃されているらしい。らしい。。。
また、一番はじめに買う宝石ではないとする意見もある。

素人相手に、特殊性・稀少性・一生モノだからと言ってヤケに推してくるというのは、
疑ってかかったほうがいいのかもしれない。

今回、「枯渇したとされているブラジル産の在庫が残っている」という触れ込みだったので、
類似するような状況に陥った時は、注意が必要かもしれない。



はー、せっかくの3連休の半分以上をこれに費やしてしまっているわけか。。。


コメント